骨組の最適設計


座屈荷重係数を制約条件として、骨組構造物を最適化する。 まず、次のような3層3スパンの骨組に対して、鉛直な荷重を作用させることを 考える。

3層3スパンの骨組
3層3スパンの骨組構造物

Λをパラメータとして比例載荷する。 骨組が座屈するときのΛの値は座屈荷重係数と呼ばれる。 いま、正の座屈荷重係数がある最小制限値以上である、という制約を設ける。 断面積を設計変数として、構造物の総部材体積を最小になるような断面積を求め る。この問題の解は次のようになる。

最適解その1
最適解

本最適化問題は、断面積の関数として定められる実対称行列が半正定値であると いう制約の下で、総部材体積を最小化する問題に帰着できる。 さらにこの問題をSDPとして逐次近似し、繰り返しSDPを解くことで最適解 を簡単に求めることができる。 最適解では、次の4つの座屈モードが重複している。

座屈モード1 座屈モード2


座屈モード3 座屈モード4
座屈モード

この座屈モードの重複のために、既往の手法で解を求めることは極めて困難であ る。 しかし、SDPを用いて解を得る手法では、容易に最適解を得ることができる。
骨組構造物では、通常、上層の柱の断面積が下層のそれよりも大きくなるような 設計はしない。 そこで、上層の柱の断面積は、下層の柱の断面積以下であるという制約を設けて 最適化を行うと、次のような最適解を得ることが出来る。

最適解その2
最適解

このとき、最適解では次の3つの座屈モードが重複している。

座屈モード2の1 座屈モード2の2


座屈モード2の3
座屈モード

このように、対称なnon-swayモードと、逆対称な2つのswayモードが重複してい る。
座屈荷重制約条件下での骨組の最適設計については、これまでに、swayモードと non-swayモードの2つが重複することは知られていた。 しかし、ここで示したように、3つ以上のモードが重複することは知られていな いようであるので、これらの結果は非常に興味深い。 このように多数の座屈モードが重複する結果を得ることができるのは、SDPを 用いて最適設計問題を解くと、座屈荷重係数の重複に関係なく、最適解を得るこ とができるからである。



関連論文
  1. 寒野 善博, 大崎 純, 藤澤 克樹, 加藤直樹 :
    半正定値計画法を用いた指定座屈荷重係数を有するトラスの トポロジー最適化,
    日本建築学会構造系論文集, No.541, pp.113-119, 2001.

  2. AISRR

(2001.8.10)

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