有限変形理論におけるケーブルネットのコンプリメンタリ エネルギー原理


コンプリメンタリエネルギー最小化原理は、微笑変形理論においては、釣合式を 付帯条件とし、力を変数とした形で得られる。 しかし、有限変形の仮定の下では、釣合式は変形後の形状に関して書かれなけれ ばならないため、力に加えて変位(あるいは一般化変位としてのrotation)を変 数として含む。

本研究の動機は、有限変形理論において、力のみを未知数としたコンプリメンタ リエネルギー最小化原理を導くことはできるのか否か、という素朴な疑問に発す るものである。
そして、この問いに対する、本研究の回答は次のようなものである。 即ち、
  1. ケーブルネットに対しては、力のみを変数としたコンプリメンタリエネ ルギーの原理を書くことができる。
  2. このとき、コンプリメンタリエネルギー関数は唯一に定まる。また、釣 合状態において、トータルポテンシャルエネルギーと絶対値が等しい。
  3. 釣合状態の安定、不安定に関わらず、常に最小化原理が成り立つ。
これらの結果は、トータルポテンシャルエネルギー最小化問題を、2次錐を制約 に持つ凸計画問題に書き直すことによって得ることができる。 3次元の2次錐は、次の図に示す円錐の表面および内部領域である。

3次元空間における2次錐
3次元空間における2次錐


ここで考えているトータルポテンシャルエネルギー最小化問題(Π)は本来、非凸な問 題である。 本研究では、これと同じ解を持つ凸計画問題を定式化する(P)。 (P)の双対問題を導くことにより、力だけを未知数としたコンプリメンタリエ ネルギー最小化原理を得ることが出来る。 コンプリメンタリエネルギー最小化原理は、応力法の基礎となるエネルギー原理 である。
次に、これらの問題の相関図を示す。

エネルギー原理の相関図
エネルギー原理の相関図


さて、ここで得られたコンプリメンタリエネルギー関数は、仮想補仕事の原理か らも導くことができる。

仮想補仕事 仮想仕事
仮想補仕事と仮想仕事


このような考察から、得られた関数は真のコンプリメンタリエネルギー関数であ ることが分かる。



関連論文
  1. 寒野 善博, 大崎 純 :
    有限変形を考慮したケーブルネットのコンプリメンタリエネルギー最小化原理,
    日本建築学会大会学術講演梗概集(B1), pp.??-??, Sept. 2001 (関東).

(2001.8.10)

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